昨日アルトSS30で出勤する際にエンジンを始動した時の事。
「あれ?いつもと何か違う気がする・・・」、そういえば始動する際にオイル・ブレーキ・充電の3つの警告灯が全く点灯していなかったぞ。
暖気の為に車庫から出して一旦エンジンを止めて再始動する時に警告灯に目をやれば、何事も無かったかの様に3つとも煌々と点灯しています。
気のせいだったかもね・・・と仕事に行き、本日勤務が終わって帰ろうとアルトのイグニッションキーを捻るも警告灯が全く点灯せず・・・。
(写真はキーオフ時に撮影しているので燃料ゲージはEのままですが、実際は作動します)
これは気のせいでは無かったか!以前イグニッションヒューズ切れで同様に警告灯が点灯しなかった時もありましたが、再びヒューズ切れであるならばエンジンはクランキングすれど点火系に電源が行かないので掛かる訳がありません。 →以前のトラブルはこちら
今回は警告灯が全て点灯しないにも関わらずエンジンは普通に掛かり、発電電圧も測定するまでも無くライト点灯させても全くインパネランプの明るさに問題がありません。
警告灯が付かないだけで他は全く問題が無いという事ですね。しかも再始動すると症状は無くなります。
・・・これは充電回路が分かっていれば直ぐに何処に問題があるか分かりますね!
ポイントは充電(チャージランプ)が点灯しない事です。
充電(以下チャージランプ)の点灯を司る回路はイグニッションキースイッチからチャージランプを経てボルテージレギュレータに入ります。そこでボルテージリレーのNC接点を経由してアースする事でチャージランプが点灯する様になっております。
ボルテージリレー接点へ入る時にボルテージコイルへ行く分岐がありますが、電気は抵抗の少ない方へ流れるのでエンジン始動前はイグニッションからの電源は全てボルテージリレーのP0→P1へ流れます。
写真はパブリカ・ヨタハチの修理書に記載されているオルタネータとゼネレータレギュレータの基本配線図です。
この様に通電した後にエンジンを始動させると、オルタネータのステータコイルに発電された電気がレクチファイヤと通過して整流された後にB端子を通過してバッテリ電圧以上の電圧を発生させます。
同時にステータコイルの中性点に接続された配線がボルテージレギュレータのN端子へ結ばれており、発電開始と同時にボルテージリレーのプレッシャーコイルを通過する為に磁力が発生して、P0→P1と繋がっていた接点をP0→P2へ切り替えます。
するとP2はB端子なので今までアースしていた回路が無くなり、P2と接続した事で同電位となって(お互いからバッテリ電圧が印加される)チャージランプが消灯する仕組みです。
余談ですが切り替わった時点で電気の流れ的にはB端子より制御された電圧がP2→P0と通過して、分岐点を下へ向かいエンジン回転中はボルテージコイルの制御をしてE端子でアースしています。
つまりイグニッションキーをオンにしてチャージランプが点灯しない場合は
1.チャージランプ球の球切れ
2.ゼネレータレギュレータのL端子導通不良
3.ゼネレータレギュレータのE端子導通不良
のいずれかになります。
(エンジン始動する為ヒューズ切れは割愛しています。またボルテージリレーのP0及びP1接点焼け等の接触不良も点灯の動作がある一定であるものの正確になされている為、これも割愛しています)
今回の症例では再始動時にチャージランプは点灯しますので1は無くなります。またエンジン始動後の充電電圧に異常が無いのでボルテージレギュレータ自体は作動していますので3のE端子導通不良も無くなります。
よって答えは2のボルテージレギュレータのL端子導通不良、それも完全に導通が無くなった訳で無く抵抗過大により、ある程度電圧が落ち着いたバッテリ電圧だと接触抵抗で電圧降下を起こしてチャージランプを点灯させるだけの電圧が出なかった。しかしエンジン始動後のバッテリは端子電圧が若干上がる為、微妙に発生した接触抵抗を通過してもチャージランプを点灯させる電圧は確保出来ていたという訳です。
犯人はゼネレータレギュレータのコネクタでした。
接点復活剤を使用した後に何度かコネクタを抜き差しして作業完了です。
因みにオイル・ブレーキ警告灯ですが、この種の警告灯は球切れ確認の意味も含めてイグニッションキーオン時に点灯し、エンジンが始動してN端子に電圧が加わってボルテージリレーが作動すると消灯する仕掛けとなっております。
但しエンジン始動後も点灯しづける条件として、オイル油面やブレーキフルード油面低下でセンサーがアースしている場合です。これら警告灯はチャージランプと同じ系統で配線されているので、同時に点灯しないと言う事はゼネレータレギュレータのコネクタか、メーターパネル裏のコネクタの2箇所が怪しいという事になります。
しかし今回は始動後は正常に作動するので、メーターパネル裏等のコネクタ接触不良の疑いは直ぐに消えて無くなります。
下はブレーキ警告灯の作動。エンジン始動前はブレーキ警告灯・チャージランプが並列接続となっているので同時点灯しますが、エンジン始動後はレギュレータポイントが開いてアース回路が断たれます。
するとチャージランプはダイオードがある為にアースされる箇所が無くなり消灯しますが、ブレーキ警告灯は油面センサーにあるフロート連動のリードスイッチで点灯・消灯が制御されます。
油面が充分であればリードスイッチは開いているのでアースしないので消灯しますが、油面が低下してくるとリードスイッチが閉じてアース回路が成り立つのでブレーキ警告灯が点灯します。
2ストオイル警告灯回路もダイオードを使用した同様の回路で構成されております。
(この2つはスズキの修理書にある配線図です)
外付けゼネレータレギュレータの車自体が廃れているのでこんな症例は滅多に出会う事も無いでしょうが、やはり基本的な回路の構成を押さえておかないといけませんね。今やレギュレータ機能がECUと一体化したりと技術の進歩は目覚ましいです。ですがこういう古典的な回路が理解出来ていないと充電電流制御方式とかも頭の中でピンとこないと思います。
最近ネタが無いのでアップさせて貰いますが(笑)